2006年8月 1日 (火)

小説「博士の愛した数式」

映画は観ていないのですが、人に勧められて小説を読みました。

良かったですね。とても。

寂しいけれど、静謐で、温かさに溢れる作品でした。

記憶が80分しか蓄積されない数学者”博士”と、孤独なまま生きてきた若い家政婦、ワガママを言わない家政婦の息子”ルート”くん。

3人の温かなふれあいが儚くも温かく描かれる素敵な作品です。出てくる人が大人から子どもまで不器用で、それがたまらなく印象的。博士の蓄積されない記憶に重ねて、博士の核心に迫る部分は直接は描かれない、けれども今ここで博士の人柄や過去を家政婦とルートは少しずつ感じ取っていく。たとえ次の日になったら博士が自分たちのことを忘れていようとも、二人は関わり続け、博士という人間の輪郭が描き出されていく。

小川洋子、初めて読みました。素敵ですね。弱いく不器用でどこか不幸な者と同じ目線、そこから広がる世界が美しい描写で綴られていました。





博士の愛した数式


Book

博士の愛した数式


著者:小川 洋子

販売元:新潮社

Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年6月23日 (金)

小説「スワロウテイル」

映画の方が有名な岩井俊二の「スワロウテイル」。友だちに勧められて読みました。良かったです。小説も岩井俊二自身の作。

全体に空気が良い。

全編を通して現れる,世の中の不条理の数々。お金,売春,名前のない子ども,窃盗,きれい事,建前,人々の争い・・・。それらがひどくカラッと扱われています。妙な「建前」「きれいごと」的な神妙な扱いをしていないのがよい。たぶん主人公は失踪した売春婦の子どもで名前のなかった女の子「アゲハ」。思春期に入りかけたその女の子の目線で描かれているこの小説は,当事者をおいてきたようなオジサンの上からの説教みたいなイヤな問題の扱い方ではない。

確かに不条理なんだけど,そこに人がちゃんと居る。そこで人が人らしく生きている。たくさんの不条理と,彼ら彼女らなりのささやかな(?)生活と。そこに人が生きていることの方がよっぽど素敵。その空気がとても良い小説でした。

スワロウテイル Book スワロウテイル

著者:岩井 俊二
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月10日 (月)

「黄色い目の魚」

読んだことのない作家でしたが、勧められて読んでみました。

江の電の辺りを舞台にした、不器用で突っ張った女の子と自分や現実に向き合えない男の子の恋の物語でした。

良かったですね。透明な感じ。爽やかな空気感が漂う作品でした。登場人物が子どもも大人もみんな傷ついていて、弱くて、不器用で。そんな所がとても私の好みでした。「絵」というのが物語中で重要な役割を果たしているのですが、その「絵」という題材も良いですね。本当は見えないはずの心や人としての本質を絵という可視的なもので捉える面白さが、それぞれの登場人物のキャラクターの輪郭を描き出すのにとても生きている。

続きを読む "「黄色い目の魚」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年3月28日 (火)

「ダイヤモンドダスト」

「ご縁」という言葉がなんとなく好きです。
「運命」ほどご大層な感じがしなくて、緩やかで、だから好きです。

今日のご縁は「南木佳士」でした。

あるクライエントさんとお話ししていた時、ふと南木佳士の「阿弥陀堂だより」に出てくる阿弥陀堂のおばあちゃんを思い出しました。その作品が話題に出たわけではないし、それを思い出したことを相手の方に伝えたわけではないのですが。後で面接の記録を書きながら、ふと南木佳士の作品でずっと読もうと思っていて、読んでいなかった作品があったのを思い出しました。

第100回芥川賞受賞作品「ダイヤモンドダスト」です。

続きを読む "「ダイヤモンドダスト」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年12月22日 (木)

「たそがれ色の微笑」

Renjyou0028jpg大掃除とは、なかなか進まぬものです。だって、寄り道をしてしまうんですもの。

ここ数日、大掃除をしています。年末にまとめてやろうと思っていたら、母と温泉に行くことになってしまったので、今から夜や休みを使って、ちょっとずつ大掃除をしています。で、これがなかなか進まないんだ。私の部屋の収納力が臨界点に達して来たので、まだまだ余裕のあるリビングに心理学以外の本を移動したのですが、そうすると、大好きだった小説とかが出て来てしまうわけで、思わず手に取って開いちゃったりするのですよ。

以前、悲しいことがあると手に取っていた作品に連城三紀彦の「たそがれ色の微笑」という短編集があります。連城氏の作品は私はとても好きで、今思うと何が分かっていたのか高校生のときからの愛読書です。彼の作品は残酷で、人は弱くて、でも温かくて優しいと思います。短編集だからすぐに読めるというのもあるのだけれど、この作品は自分の力ではどうにもできない悲しい事態を受けとめるしかないときに、私が静かにセンチメンタルに、心をおさめていくときに読んだ作品です。

続きを読む "「たそがれ色の微笑」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年12月20日 (火)

「別れの後の静かな午後」

以前から、そのタイトルの言葉や響きから気になっていた大崎善生です。昼休みに訪れた本屋に、彼の本は2冊並んでいたのですが、私はなんとなく「ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶」ではなく、「別れの後の静かな午後」というこの本を手に取りました。短編集だと気づいたのは買った後でした。パラパラとめくった頁々に綴られていた文章の透明感や繊細さに惹かれ、数十秒で購入を決めたので。

続きを読む "「別れの後の静かな午後」"

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2005年12月 6日 (火)

「さよならの空」

Sayonara
昼休みに立ち寄った本屋で、「さよならの空」という本に出会いました。
平積みになっている上に、誰かが書棚から取り出して、そのまま放置したらしいこの本が一冊。
「さよならの空」というセンチメンタルで私好みなタイトルと、頁を繰ってみたプロローグが素敵で買いました。
・・・・・・・・・・・
夕焼けって知ってるかい?



パパが子どもの頃には、夕焼けがあったよ。
本当さ。
真っ赤な真っ赤な、夕焼けがあったんだ。

続きを読む "「さよならの空」"

| | コメント (0) | トラックバック (1)