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2006年4月10日 (月)

「トニー滝谷」

「孤独であることに気づかず日々を静かに一人で暮らしていたトニー滝谷。彼は、ある日、空っぽの自分を服で埋めている女性に出会う。軽やかな、爽やかな風のような彼女に出会い、トニー滝谷は自らの孤独に気づく。二人は結婚し、トニー滝谷の孤独は終わる。再び孤独になることへの一抹の不安を心の奥にしまって。ある日、服を失った彼女は死んでしまう。そうして、トニー滝谷は再び孤独に戻る・・・」

静かな映画ですね。台詞が極端に少ない。その代わりナレーションで話が進んでいく。役者が動いて季節が巡って、風景が通り過ぎて、それなのに極端にリアリズムを排した映画だと思いました。ナレーションと役者の台詞が重なり、客観と主観の入り交じる不思議な作り。場面の流れ方も独特で、ストーリーがダイナミックに展開していくのが映画だと思っている人にとっては「?」という感じでしょう。そういう既成概念からすると映画というより、小説とヴィジュアルアートの中間みたいな作品、と言えるかもしれません。
トニー滝谷の孤独と、妻の中の空虚。テーマは分かりやすいんですよ。それを分かりにくく描いている。それって面白いと思いました。孤独や空虚は分かりやすいようで奥が深い。孤独は慣れていくけれど、その実生活のなかにしっかりとけ込んでいて、消えないんですね。空虚はどんなに愛してくれる夫がいても、決して埋まっていかないのです。淡々とした流れのそこにそんなものを静かに、しかし深く潜ませている。そこが面白い。

その映像のイメージが伝えている空気と、そこから感じられる感情を静かに感じ取る、そんな映画だと思います。

役者、良いですね!
イッセー尾形、彼の個性を極力抑えて、静かに画面にとけ込んでいました。
宮沢りえ、この人の空気。「服を着るために生まれてきたみたいな人」、その空っぽなのに爽やかで軽やかな空気は彼女の持っている力の抜けた柔らかい空気がハマり役でしたね。

原作は村上春樹とのこと。読んだことないんですが。正直村上春樹が映画になるってかなり意外感ある。ないわけじゃないけど、数は少ないですよね、多分。この「トニー滝谷」は「レキシントンの幽霊」に収録されているそうです。あの短編集昔読んだ気がするんだけど、全然覚えてないので読んでないのかも(笑)

音楽は坂本龍一。この映画の独特の空気はこの人の音楽なしでは生まれなかったでしょう。この淡々とした、現実感のない、それなのにとても寂しく悲しい、その空気はこの音楽があってこそではないかと思います。

監督は市川準氏。彼の映画は「トキワ荘の青春」しか観たことないですが。あれも静かでいい空気出してましたね。映像の作りも良かった。ちょっと他の作品も観てみたい感じですね。興味持ちました。

正直好みのはっきり分かれる映画ではないかと。寝る人は多分寝ますね。私は好きです。

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コメント

TBありがとう。
いい感想だと思います。
みなさん、トニー滝谷の孤独は了解するんだけど、妻の空虚は指摘している人は少ないですね。まあ、りえちゃんの、美しさに、見とれるという要素が多いでしょうが(笑)
トニーは、妻によって、鏡に映った自分をみるように、自分の孤独の深さと喪失の怖れを、発見していくんだと思います。
トニーも妻も、病気です。だけど、この病気は、たぶん、現在の僕たちには、多かれ少なかれ、内在しているんだ、というように書かれているような気がしました。

投稿: kimion20002000 | 2006年5月 7日 (日) 08時04分

>kimion20002000さん。

コメントありがとうございます。
病気ですか・・・・。私、心理が仕事なんで、病気と言っちゃうと仕事になっちゃう感じで、イヤなんですが(笑)。ただ、一般的に「病気」と言っちゃうと随分特殊な存在のように感じで片付けられがちですが、極端なだけど、根本に持っているものは病気とはされない人と同じで連続線上にあると思います。
特に映画や文学で描かれる場合には、そうかな?と。おっしゃるように自分たちの中に内在している何か、として観た時に、映画で描かれているものが見えてきますよね。

投稿: あき | 2006年5月10日 (水) 22時17分

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